2024年新車販売台数は前年比13%増、輸入額も増加(エジプト)
2025年6月9日
エジプトの自動車市場情報委員会(AMIC)によると、2024年の新車販売台数は10万2,249台(前年比13.2%増)であった。エジプトでの新車販売台数は2021年をピークに減少し続けていたが、それが増加に転じたかたちだ(図1参照)。
車種別には、乗用車が8万1,475台(17.8%増)、トラックは1万3,387台(5.2%増)だった。
一方、バスは 7,387台(12.7%減)にとどまった。バスの減少は、主に交通用マイクロバスの販売減によるものだ。現地生産していない特定のメーカーでは2024年、輸入が滞った。その結果、販売在庫が逼迫する状況が続いている。それが販売減の要因と考えられる。

出所:AMIC
外貨流動性の回復に伴い、市場拡大の兆し
2024年の新車販売台数のうち、現地組み立て車は6万366台(前年比23.6%増)、輸入完成車は4万1,883台(0.9%増)だった(図2参照)。

出所:AMIC
エジプトでは、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、主な輸入品(原油や小麦)の価格高騰で外貨不足が深刻化、完成車をはじめ、多くの物品の輸入に外貨送金規制を実施した。
エジプト中央動員統計局(CAPMAS)によると、完成車の輸入額は2021年がピークで、翌2022年に激減、その後、外貨準備高の回復に伴って2023年に微増、2024年は、2020年とほぼ同水準の32億7,300万ドルになった(図3参照)。エジプトは中古車の輸入を禁止しているため、完成車の輸入増が新車販売増に直結する。輸入から国内流通、販売まで時間が掛かることを考慮すると、2024年の輸入増は、2025年の販売増加につながるだろう。

出所:CAPMAS
なお自動車部品の輸入額は、完成車よりも安定している。これは、エジプト政府が、外貨不足の状況下であっても、輸出産業育成や雇用維持のために、製造業の部品輸入に外貨を優先的に割り当てたためと考えらえる。(図4参照)。
エジプトでの自動車製造は、ほとんどが組み立てである。政府や各メーカーは現地調達比率上昇を目指してはいるものの、主要部品は輸入に頼っているのが現状だ。実際、部品輸入額が前年比約20%減少した2023年には、組み立て車の販売台数が大きく落ち込んだ。2024年には部品輸入額が増加するに伴い、組み立て車販売も増加した。自動車市場の拡大には部品を輸入するための外貨流動性の確保が重要といえる。

出所:CAPMAS
国別シェアで中国が日本を逆転、日産の首位は維持
乗用車販売台数を国・地域ブランド別にみると、日本車は2万6,156台(前年比8.3%増)、中国車は3万441台(37.3%増)。日本が長年維持してきたシェア1位の座を、中国に明け渡したかたちとなった(図5参照)。
他国・地域も、前年に減少した反動で軒並み増加している〔欧州(26.1%減)は除く〕。特に韓国車は大幅に増加した(47.7%増)。
個別ブランドの全車種合計では、次のとおりだ。
- 日本勢
日産が15.9%。シェア首位を維持した(図6参照)。
他の日本ブランドについては、トヨタ(9.2%)、三菱(3.1%)が続く。この2社とも、シェアを伸ばした。
一方、スズキは、シェア1.9%にとどまった。 - 中国勢
中国ブランドを牽引するのが、奇瑞汽車(チェリー)だ。同社はシェアを13.4%に伸ばし、2位につけている。
その他では、MG(7.5%)、BYD(4.7%)が、いずれもシェアを伸ばした。

出所:AMIC

出所:AMIC
市場拡大を見据え、複数外国メーカーに動き
国内の自動車市場は依然として、外貨不足発生以前の水準には程遠い。それでも2024年以降は、自動車製造に向けた外国企業の投資や、エジプト市場への新車種導入事例が増えている。
- 日産自動車
2024年2月、シリーズハイブリッドシステム搭載車の輸入販売を開始。
12月には新車種組み立てに向け、4,500万ドルの投資契約を締結(2024年12月11日付ビジネス短信参照)。 - 三菱自動車
2024年7月、新型コンパクトのスポーツ用多目的車(SUV)「アウトランダー・スポーツ」の販売を開始(2024年7月5日付ビジネス短信参照)。 - ステランティス
2024年9月、「ジープチェロキー」の現地組み立て開始を発表(2024年9月12日付ビジネス短信参照)。 - GM
2024年9月、新型セダンの現地組み立て開始を発表(2024年10月15日付ビジネス短信参照)。 - 吉利汽車(Geely)
2025年1月、完成車組み立て開始を発表(2025年1月23日付ビジネス短信参照)。同社が当該事業に取り組むのは、中東・アフリカ地域で初。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・カイロ事務所
塩川 裕子(しおかわ ゆうこ) - 2016年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ富山、企画部(中東担当)を経て2022年7月から現職。