アフリカと日本の未来切り拓く、日系スタートアップの挑戦Teraform、革新的な土壌保水剤でアフリカの農地に潤いを

2025年6月4日

アフリカは気候変動の影響を最も大きく受けている地域の1つだ。近年、洪水や干ばつが頻発し、各地の農業に壊滅的なダメージを与えている。また、ケニアはアフリカでも有数の農業生産国の一方で、国土の北部半分は乾燥地帯で農業が難しい。ケニアに限らず、アフリカには水源不足や灌漑技術の不足から、農業の難しい土地も多くある。東京発のスタートアップ企業のTeraform(注)は、革新的な土壌保水剤を開発し、気候変動のインパクトを抑えながら、水資源の乏しい地域でも農業ができるよう取り組みを始めようとしている。同社の最高経営責任者(CEO)の日高聡氏に、アフリカでの取り組みについて話を聞いた(取材日:2025年4月3日)。

質問:
御社の事業概要について。
答え:
独自の土壌保水剤を開発した。製品名は「スーパースポンジ」で、土壌に散布して水やりをすると、土壌を3カ月以上保水し、作物の収穫量を最大20%向上させることができる。最大40%の節水が可能で、生分解のため環境にも優しく、干ばつ地域の農地に潤いを与える新技術だ。ハイドロゲルに関する研究開発に従事した経験を基に、農業分野の水資源の課題解決に取り組むべく、2025年4月に新会社を設立した。強みは、他社と比較して生産コスト、販売コストを大幅に引き下げられることだ。
質問:
なぜ、アフリカに取り組もうと思ったのか。実際に取り組んでみた感想は。
答え:
干ばつの影響を深刻に受けている地域が最も多いのがアフリカだからだ。10年前にモロッコと南アフリカ共和国を旅行した。ケニアには2025年2月にジェトロの支援を受けて、アフリカ・テックサミット参加のため初めて訪問し、幾つかのケニアの農場で意見交換を行った。ケニアでは大きなポテンシャルがあることが確認できた。日本で一番大きな農場は帯広にある1,700ヘクタールほどの牧場で、日本では20~30ヘクタールでも相当大きな農地だ。だが、ケニアで訪問した農場は、例えば、マカデミアナッツだけで1,000ヘクタール、ほかにも2万ヘクタールを超えるような農地を持っているとの話だった。アフリカの大地の大きさを実感した。干ばつのエリアも大きく、市場の大きさを肌で感じることができた。現地のビジネスマンに技術を説明したところ、面白いスポンジ(商品)だと言ってもらえるなど、好反応だった。

ケニアで訪問した農場(Teraform提供)
質問:
どのような点が課題と感じたか。
答え:
連絡が途切れやすいことだ。なんとか話を前に進めようと努力しているが、米国人などと比べると、国民性も異なっていて、苦労している。こういったコミュニケーションギャップをなくすためにも、将来的には、現地の人を採用するのがよいと考えている。
質問:
最後に、アフリカへの意気込みは。
答え:
まずは、大規模な農場をパートナーに、概念実証(PoC)を進めたいと考えている。現在流通しているドイツ製などの競合品は非常に価格が高い。最初は大規模な農場が主な販売先となるだろうが、弊社の製品は大幅にコストを引き下げられることから、最終的には小作農も使えるようにして、アフリカの農業資材市場で一般的な製品として認知されるようになりたい。

アフリカ・テックサミットで講演する日高聡CEO(ジェトロ撮影)

注:
JTAC採択時点では、株式会社YAXIE外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。2025年4月に、農業分野に特化したTeraformを設立した。
執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所長
佐藤 丈治(さとう じょうじ)
2001年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所、企画部企画課、ジェトロ・ラゴス事務所、ジェトロ・ロンドン事務所、展示事業部、調査部中東アフリカ課を経て、2023年5月から現職。